本採用になるまでの試用期間なのか、6か月の契約期間(有期労働契約)なのか

まず、「採用されてから6か月は仕事ぶりを見て」という部分が、本採用になるまでの試用期間なのか、6か月の契約期間(有期労働契約)なのかという点が問題となります。

この点について、判例は、契約期間を設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間満了時に雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、同期間は、契約の存続期間の定めではなく、試用期間であると解するのが相当と述べました(最判平2・6・5民集44巻4号668頁)。

ご相談の事例でいうと、仕事ぶりを見て評価に問題がなければ正社員にすると言われていますので、この6か月の期間を設けた趣旨・目的は、労働者の適性を評価・判断するためのものといえ、試用期間であると考えられます。

次に、試用期間については、当初から期間の定めのない通常の労働契約であるが、試用期間中は使用者(会社)に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されているものと考えられております。そして、試用期間後の本採用拒否が認められるためには、「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ」許されます。具体的には、「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨・目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」にのみ許されると考えられています(最判昭48・12・12民集27巻11号1536頁)。そして、この留保解約権の行使については、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められると考えられています。

ご相談の事例では、評価は悪くないのに正社員にはできないということですので、採用決定後における調査結果や試用中の勤務状態等により当初知ることができなかった事実を知ったという場合ではなく、客観的に合理的な理由がないものとして、留保解約権の行使は認められないのではないかと考えられます。